ネットやAIには真似できない。大ベテランの「脳内一瞬」という最強のノウハウ、そして次世代へのバトン。
怒涛の1週間の終わりに
今日は朝から張り詰めた一日でした。 弊社にとって最も重要なお得意様が、わざわざこの小さな工場まで足を運んでくださり、直接お会いして貴重なお話をさせていただくことができました。やはり、顔を合わせて交わす言葉には、メールや電話にはない確かな温度があります。
さらに、この2日間全力を注いでいた「とある監査」も本日無事に終了。大きな問題もなくクリアでき、張り詰めていた糸が切れたようにホッとしています。
そんな中、夕方に協力工場の社長さんのところへ伺い、打ち合わせをしてきました。そこで改めて深く気付かされたのが、ものづくりにおける「ノウハウ(経験値)」の本質についてです。
「断面を一瞥しただけで」始まる、一瞬の会話
ノウハウとは一体何でしょうか。 機械の操作方法や手加工のコツ、綺麗に印刷するための技術。もちろんそれらもそうですが、本質はもっと深いところにあります。それは「細部への気遣い」であり、「過去の失敗から逆算したリスク予知と、そのための準備(バッファー)」です。
現在、弊社で扱っている非常に工程が多くて難易度の高い、ロングランの製品があります。 普通なら立ち上げ時に大なり小なりのトラブルが起きるものですが、驚くほどすんなりと量産をスタートさせることができました。なぜか。それは、「お客様・弊社・協力工場」の3者すべてが、ベテランのノウハウの塊で進めていたからです。
図面を見ただけで、初心者にはチンプンカンプンな「ここが難しい」「どこに気をつけるべきか」「どこの公差を事前に折衝しておくべきか」が、全員の頭の中で瞬時に共有されている。だから話が早いのです。 気がつけば私もこの道24年(笑)。協力工場の担当者さんはそれ以上の大ベテランですから、電話一本、メール一本で核心が通じます。
別の社長さんは、製品の断面をパッと見ただけで「あ、これは以前あの方法で加工したな」と分かり、私もそれを一瞬で理解できる。 「こっちの方法なら安上がりだけど、材料の取り数が減るよ。あっちの方法ならコストは上がるけど、取り数が増える」 そんな提案が、資料をひっくり返すこともなく、一瞬で口から出てくるのです。
ネットやAIの「表面上の知識」との決定的な差
今の時代、ネットで検索すれば、あるいはAIに聞けば、どんな専門知識もすぐに手に入ります。デジタルでの知識の蓄積は凄まじいものがあります。
しかし、それはあくまで「表面上の知識」です。 AIにわざわざ聞きに行き、出てきた答えを理解するためにまた調べ直す。それでは、知識がまだ自分の「腹」に落ちていません。腹に落ちていないから、次のアクションに自信が持てず、結果としてスピードが出ないのです。
一方で、ベテランのノウハウは、インプットから判断、提案までの一連の流れが自分の脳みそだけで一瞬で完結します。 この圧倒的な「スピード」と「決断への自信」があるからこそ、ブレずに周りの人間を巻き込んでいけるのです。
そして、この脳内一瞬のスピード感が最も威力を発揮するのが、万が一の「トラブル発生時」です。 「次に何をすべきか」「誰に、どう報告すべきか」――その場の一瞬の対応の差によって、ピンチをチャンスに変え、結果として「失敗を強固な信頼へと繋げる」ことができる。これこそが、長年の泥臭い経験が生む本物のノウハウです。
「一朝一夕では無理」で終わらせないために
「やっぱり、職人の経験は一朝一夕には真似できないね」
ここで話を終わらせてしまっては、ただのノスタルジーです。 この、長年かけて蓄積してきた「脳内一瞬のノウハウ」を、どうやって次の世代に、しかも短期間で伝えていくか。 これこそが、これからの私の最も重要な役割だと確信しています。
先日のブログでも書いた「動画マニュアルの活用」や「テキストでの徹底的な残し方」は、すべてこの大ベテランたちの頭の中にある財産を、未来へ繋ぐための仕掛けです。
今週は本当に頭も体も使い果たして、疲れがピークに達しています(苦笑)。 まずはこの週末、しっかり頭を休めて、来週からまたこの「ノウハウのバトンパス」に挑んでいきたいと思います。
今週もお疲れ様でした!良い週末をお過ごしください。
