【新シリーズ】中小企業のDX・AI化が絶対に進まない3つの壁。2000年当時の「あの既視感」について
昨日、地元の経営者の集まりで「中小企業におけるAI活用」に関する講演会を聴く機会がありました。そこで語られていたのは、「中小企業ではAIもDXも、導入が進んでいない」という冷徹な現状でした。
自社でデジタル化を泥臭く推し進めてきた身として、「なぜ多くの会社でストップしてしまうのだろう?」と考えたとき、そこには中小企業ならではの3つの巨大な壁があることに気づきました。
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「定義付け」の難しさ(理屈は簡単だが、実務は地獄)
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自社でルールを「主導できない」もどかしさ
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すぐ利益にならない「コストメリット」の落とし穴
今回から3回シリーズに分けて、このリアルな壁の正体を掘り下げていきたいと思います。第1回の今日は、すべてのスタートラインでありながら最大の難所である「① 定義付けの難しさ」について深掘りします。
「感覚」や「属人化」は、中小企業の最強の武器でもある
よく巷のビジネス書やコンサルタントは「属人化は悪だ」「感覚に頼るな」と口を揃えて言います。しかし、現場を預かる身からすれば、その「感覚」や「属人化」こそが、中小企業の最大の強みである「圧倒的な小回りの良さ」を生み出しているのも事実です。
「あのお客さんのときは、なんとなくこの塩梅で臨機応変にやっといて」
この一言で現場が回り、スピード解決できるのが町工場の良さです。しかし、いざデジタル化・AI化しようとすると、その曖昧な「なんとなく」をすべて言語化・テキスト化し、システムに認識させなければなりません。これが気が遠くなるほど大変なのです。
「あいまい検索」の罠と、泥臭いテキスト入力
今の時代、ネット検索や生成AIは「あいまい検索(なんとなくのニュアンスで探すこと)」が主流です。適当に言葉を打ち込んでも、賢いAIが意図を汲み取って答えを出してくれます。
自社のデータ量がまだ少ないうちは、社内システムもこの「あいまいさ」でなんとなく運用できます。しかし、毎日データが増え続ける製造業の現場において、この甘えは命取りになります。
増え続ける膨大なデータの中から、5年前、10年前の「あの図面」「あのお客様の過去の特殊な仕様」をピンポイントで引き出すためには、表記の揺れを一切許さない正確なテキスト入力とルール化が絶対に不可欠です。
理屈で「データを標準化しよう」と言うのは簡単ですが、そのための「言葉の定義付け」を行う実務は、地味で、泥臭く、終わりなき苦行のようなものです。ここを乗り越えられずに挫折してしまう会社が非常に多いのです。
次回以降の予告:主導権とコストの落とし穴
少しだけ、次回以降の予告をさせてください。
2つ目の壁は、ルールを「主導できない」こと。 大手企業なら「我が社は今後このコードで統一します!」と下請けにルールを強制できますが、中小企業はそれができません。 (先日、同じ品名なのに内容が毎回変わる注文書データに悩まされ、思い切ってお客さんに打診してコードを変えてもらった、という本当にありがたい事例がありました。こうした重複作業をどう取り除くかがポイントになります)
そして3つ目の壁が、「コストメリットの落とし穴」。 細部を詰める準備には莫大な時間がかかるのに、人手はなく、すぐには利益になりません。小規模企業なら、アナログのままでも自分たちの給料分くらいは何とかなってしまう。だから後回しになり、諦めてしまうのです。しかし、気づいたときにはデジタル化した他社と追いつけないほどの差が開き、最後は廃業へと向かってしまう……これが本当の恐怖です。
結び:2000年前後、インターネット黎明期の「再来」
色々と厳しい現実を書きましたが、それでも私は確信しています。 「やれば、必ず100%良い結果になる」ということです。
これから深刻な人手不足が加速し、サプライヤーが減っていくのは確定事項です。万が一、市場全体が縮小したとしても、デジタル化によって圧倒的な生産性を手に入れた企業は、残ったパイを確実に総取りできます。
思い返せば、2000年前後のインターネット黎明期がまさにそうでした。 弊社は当時、周囲がまだ様子見をしている中で、いち早くホームページを開設してネット経由の受注を開始しました。それが四半世紀経った今、弊社の経営を支える大きな柱になっています。
今のAIやDXを巡る状況は、あの時の感覚と全く同じです。 「やる人」と「やらない人」の差が、ここから恐ろしい勢いで広がっていく。
だからこそ、これは社員任せでは絶対に失敗します。会社で一番業務フローを理解している社長自身が主導し、誰よりも泥臭く地道にやるしかないのです。
次回は、2つ目の壁「主導できないもどかしさと、そこへのアプローチ」について詳しく書きます。どうぞお楽しみに!
皆様、今週もお疲れ様でした。良い週末をお過ごしください。
