「駆け込み」がもたらす工程のアンバランス。町工場が直面する、多能工化の壁。
私たちのモノづくりの特徴は、「多品種少量生産」です。「銘板」という限られた商材を扱っていながらも、その製法は多岐にわたります。 アルマイト印刷、エッチング、シール印刷、デジタル印刷、手加工、シャーリング、プレス……。
これらすべての工程が、パズルのピースのように美しく噛み合って動いてくれれば、手空きも待ち時間も発生しません。しかし、現実のモノづくりの現場はそう甘くはなく、時にそのバランスが劇的に崩れる瞬間があります。
今日が、まさにそんな日でした。
予期せぬ集中と、設備のキャパシティ
社内のある一つの工程に、キャパシティを遥かに超える注文が集中してしまいました。その結果、次の工程に仕事が回らなくなってしまったのです。
これは、現場の段取りが悪いわけでも、スタッフの能力が足りないわけでもありません。純粋に「設備のキャパシティ(物理的な限界)」です。機械がこれ以上受け付けない、という状態です。
こうしたアンバランスなタイミングは、ある日突然やってきます。 社内の工程管理をどれだけ可視化していても、お客様からの受注タイミングまではコントロールできません。特に今は、各資材の「値上げ直前」のタイミングです。「駆け込み発注は勘弁してくださいね!」と事前にお願いしてはいても、やはり駆け込みは発生します(笑)。気がつくと、とんでもないボリュームの注残が特定の工程に積み上がっていました。
解決策はただ一つ、「多能工化」
こればかりは、市場の原理として「仕方のないこと」と割り切るしかありません。ただ、ここ数日の現場の進捗状況をじっくり見てみると、限られた時間の中で、それぞれが本当にバランスを取りながら最善を尽くしてくれていることがよく分かりました。そこは、スタッフたちへの感謝しかありません。
では、この突然の偏りをどう乗り越えるか。 解決策はただ一つ、「多能工化」しかありません。
「こっちの工程が手一杯だから、手の空いているあっちの工程のメンバーが手伝う」という柔軟な融通が、工程内・工程間でシームレスに行える状態が理想です。機械のキャパシティの限界については、お客様に納期調整をお願いするしかありませんが、人間のキャパシティの受け渡しは、多能工化によっていくらでも柔軟に対応できます。
製造業の技術は「体で覚える」もの
ただし、この多能工化にはどうしても「時間」が必要です。 一朝一夕、あるいは数日や数ヶ月で身につくような生易しいものではありません。さらに言えば、新しい社員が入ってくるたびに、私たちは毎回この同じ課題、同じ壁に直面することになります。
だからこそ、ここは焦ってはいけないのだと思います。 まずは目の前にある、できるところから一歩ずつやってもらう。そして、現場の空気に、機械の感触に、少しずつ慣れてもらうしかありません。
もちろん、仕組みとしてのマニュアル作りも大切です。しかし、最終的に製造業の仕事というものは、「体で覚えてもらう」しかありません。
一過性の混乱に一喜一憂せず、じっくりと腰を据えて「強い現場」を育てていく。 来週からも焦らず、目の前の仕事を一つずつ、全員でカバーしていきます!
