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町工場のステレオタイプ

昨日、テレビのニュースで大田区の町工場が、仕事激減で困っているという報道がありました。親父さんと息子さんの2人だけの工場で、旋盤で金属を削る仕事です。

ストーリーとしては、コロナショック→製造業への影響が出始めている→大手から下請けへの発注が激減→町工場の危機→製造業の危機。不景気になると大体このような報道が多いです。そちらの工場、今月の注文は10件未満で売上も10万円未満ですと。しかも注文書が紙でした。

確かに間違ってはいません。でも、これが町工場の全てではありません。そもそも、機械一つで、ある特定の大手メーカーさんのお仕事を、職人の腕一つでやっている会社はどんどん減って来ています。そんな中でも生き残っているこちらの会社様は、勝手な想像ですが、本当にとても腕が良く、価格も安く、納期対応もかなり良いから生き残っているわけです。でも、報道されたそのような町工場が、俗にいう町工場の大部分ではないのです。

私の周りの町工場を見ますと、例え数人の会社でも、定期的に機械を更新したり、もちろん職人の腕は大事ですが、機械の性能アップであったり、当社のようにデジタル化を進めたり、若い人を新たに雇用したり、日々変化しています。機械一つ・腕一つで勝負!仕事は勝手に入ってくる!っていう昔ながらの町工場はどれくらい残っているのだろうか。しかも、お客さんからの注文も紙は減っていて、EDIなどの自動受発注が多いです。そもそも、電話とファックスを使う機会は減っていて、コミュニケーションはメールが主流です。

町工場と製造業の危機を分かりやすく伝えるための見せ方だと思いますが、このような報道を見るたびに、またかぁ~と思ってしまいます。確かに大変な時期ですが、その中でもマイナスを必死に食い止める努力をしている会社もたくさんあります。

今、本当に一番キツイ会社は、大手の自動車メーカーさんとか家電メーカーさんなどの下請けの仕事で、量産の部品を手掛けている工場だと思います。人数も100人くらいで売上10億くらいでしょうか。超が付くほどの品質を要求され、納期が遅れればペナルティーになる、しかも毎週結構な数量の受注があり、納品も毎日計画通り、決まった場所への納品が要求される。そのような会社は、ある程度人数を確保しておかないと対応できませんので、自然と会社の規模は大きくなります。そうなると、固定費が毎月かかりますから、急な減産は資金繰りを直撃します。雇用調整助成金でも、入金は数か月先ですから。今の段階で、本気で資金繰りに窮している会社は、このような少し規模の大きい中小企業だと思います。

もっと規模が小さい工場ですと、数か月は何とかなるところも多いと思います。リーマンショックの経験から内部留保があるところも多いと思いますし。何なら社長など役員の給与を数か月0にするとか、社員数も多くなければ、何とかする方法は出てくるのではないでしょうか。それより、社員100人くらいの会社だと、月の人件費も相当ですから、社長の給料削ってもどうにもなりません。そうなると、人員削減で出血を止めるか、つなぎの運転資金を借り入れるしかないです。

こんな時こそ、こんなに頑張っている会社もありますよ!今は大変な時だけど、必ず復活するから、そのために準備を進めましょう!みたいな報道が多くなることを願います。月の売上が数万円の映像を見せられて、今後、製造業で働きたい!と思う若い方々はいないと思います。それより、この苦境をどんな工夫で乗り切っているのか?この不況の中で復活した時のためにどんな対策をしているのか?そんな取り組みをどんどん発信してもらいたい。

私もブログでそんな情報を発信していきますが、コロナショックで製造業が全部ダメになる!っているセンセーショナルで分かりやすいストーリーの報道は出来るだけやめてもらいたい。そのようなニュースばかりですと、何とかしようと本気で思う私たち経営者の気持ちがネガティブになって、本当にどん底になりそうです。テレビは非常に影響力のあるメディアですから、そのようなメディアの方々は、この苦境を乗り切るための報道をしてもらいたいです。本当にそう思います。影響力のあるメディアだからこそ、日本を元気にする報道をしてもらいたいです。