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安い価格が一人歩きする訳

大分少なくはなってきましたが、今でも残っています。なんでこんな価格が残っているのか!!っていう昭和時代の値段。普通に、しかも、少し安めで出しても、なんでそんな高いのか?って言われることも。

安い価格が残ってしまった理由。それは、一度見積もりした価格が何十年も残っているから。ではなんで安い価格のままになってしまっているのか?

再度交渉するのが面倒だから。それはありますね。値上げすれば、100%イヤだって言われますから。ちなみに、今現在はみなさま、値上げに対して寛容です。これだけ物価上がっているから仕方ありません。

安い価格を値上げするのが面倒でも、なんで今まで継続できたか?それは、他に安くない価格もあったし、昔は数量が多かったからです。そして、リピート発注で最終的に数量がまとまって、そこそこ利益が出たからです。だから、多めに作成して、分割納入しても利益が出たんです。

例えばこんな感じ。ある製品、ロット100枚の注文。でも、作る側だと100枚は少ない。だから、まとめて1000枚作る。それを10回に分けて納品。単価は1000枚ロットで考えて、その価格を100枚に適用する。ちょっと安いなって思っても、そのお客様全体で見ると、儲かる仕事もあるから、とりあえず安くてもいいや。そんな感覚です。

これ、間違っているんです。うちの会社も20年前までこの方法を採用していて、在庫ばっかり残って、いつのまにか生産終了。多く作った分が丸々赤字です。で、昔はもっと競争が激しかったから、儲かる仕事はすぐに無くなってしまう。で、安い仕事だけ残る。お客様に非はありません。注文出す確約もしていないし、勝手に多く作っているのだから。

あと、主に年配の方で一人とかで仕事していた方の加工賃。数円とかで受けていたケース。これも昔の量産時代の価格が残っている例です。仮に10円でも、10,000個であれば10万円ですが、100個だと1000円です。同じ感覚で考えるのは絶対NG。また、年配の人は年金もらっているし、蓄えもあるから、儲からなくてもいいや、の考え。これやられてしまうと、市場価格が歪みます。だって、生活できませんから。テレビでよくやっている、儲け度外視の定食屋さんみたいなケースです。同じものを作る側からすると、美談でも何でもないです。貧しくとも、私が犠牲になって、みんなハッピーになればよいと思っても、他のお店が困るんです。それと同じことが、モノづくりなど他の業界にも存在しているんです。

今、そのような年配の方々がたくさん仕事をやめて、価格が開示されるケースがありますが、本当に驚きます。そして、その価格に甘えてしまった人たちは本当に大変です。私も再見積もりをたくさんしますけど、これでも、かなり前の価格を考慮に入れているんです。申し訳ありませんが、その点は分かってほしいです。

であれば、安い価格で受けてくれる新興国へ。そんな流れも以前はありましたが、輸送費用の高騰、パンデミック下の供給不安、そして円安。逃れられない状況になってきているのではないかと思います。どこで作っても、リスクはあるんだから、多少高くても国内で作った方が安全。そんな状況にあるかと思います。

でも、今度は国内のキャパシティーの問題が出てきます。長いことコストダウンばかりだったから、国内の製造業、全部が元気であるわけではない。そうなるとキャパシティーが限られているから、受けられない状況も出てきます。ここ2~3年で、注文を出す側も、注文も受ける側も、環境がまったく変わってしまったといえるでしょう。