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効率化=生産性アップとは限らない。

先日、仲の良い社長さんと、製造作業の効率化について話をしていて、結構大事な気付きなので記事に残そうと思います。

部分最適と全体最適、このような大きな枠組みではないのですが、特定の作業を効率化しても、全体の生産性アップにつながらない場合もあるというお話。工場内でよく話をしますが、例えば今まで1時間で1000個だった作業を2000個にした場合、生産性は倍になったと言えます。それは間違いない事実。

作業者が一人の場合だったと仮定します。5000個の作業、以前は5時間かかっていたものが2.5時間で終わります。そうなると、2.5時間時間が余ります。その2.5時間をどう使うか?ということです。余剰の時間、同じ製品に対し、今までやっていなかった作業をしてしまい、結局2.5時間使えば生産性は変わりません。当たり前のことですが、工場ではよくあることです。

特に多品種少量だと、同じ機械で同じ製品を毎日作業する訳ではないので、最大数量5000個で、それ以上なければ、余剰の2.5時間を異なる製品、異なる機械での作業に充てないと生産性はアップしません。つまり、段取替え作業自体を効率化する、もしくは、複数の設備を操作できるマルチタスクが求められるんです。

機械の前に張り付いていなくても機械が勝手に作業してくれるものであれば、マルチタスクは比較的スムーズに出来ます。もちろん、気を付けるべきポイントは多数ありますので、セットする作業が重要となります。マルチタスクが難しいものは、機械の前に貼りついていて常に見ていないといけません。その場合、他の作業を同時にすることは出来ません。この状況で生産性をアップするには、一つの作業を終えて、次の作業にスムーズに移行しないといけません。

このような状況で求められるのは、一人で複数の機械を操作できるスキルとなるのです。つまり、他の人にセットをしてもらい、自分はひたすら同じ作業しか出来ないと、いくら効率を上げても、余剰の2.5時間を有効には使えないということです。

以前、社員何人かの作業記録を取りました。主にデジタル機器を使う社員達です。彼らの作業時間を足していくと、一日の作業時間の2~3倍となっていました。つまり、一人で2~3台の設備を掛け持ちして、同時に動かしているのです。これには驚きました。すでにマルチタスクを遂行しております。

難しいのはデジタル機器のように同時作業出来ないものです。機械が勝手に作業してくれないもの。この生産性をアップするには、まず設備を見直すこと。勝手に作業してもらう設備に変えること。あとは、作業者が複数の設備を担当できること。勝手に作業してもらえる設備はなかなか見つかりませんので、後者の方をまずは進めることになります。その場合、習熟までに時間を要する設備から、初心者でも習熟までにあまり時間を要さない設備に更新することは可能かと思います。

職人技って常に称賛されますが、その技を習得するまでの時間が膨大であれば設備に置き換える方が良いと思っております。そもそも人手不足だし、職人技を磨くだけの同一作業の繰り返しの機会は少ないのです。経営する側から見ても、その時間待ってられません。

であれば、その作業を置き換える設備を探すしかない。それはそこら中であふれているものではなく、かなりニッチなものです。自社の業務に合ったもの、適性なものを探し出すこと、これが求められていると思います。

そんなことで最近は頭がいっぱいです。今出来ても、この先ずっとできるのか?労働集約型から設備へのシフト。多品種少量生産。そんな要素が絡み合ってチャレンジングな課題です。従前からの変化、そうは簡単にはいかないっていうことです。