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情報の「断絶」をなくす。町工場のDXは、いかにして「暗黙知」を資産に変えるか?

「情報の共有」は、工場の血流である

製造業、特に私たちのような町工場において、最も大きなロスは何か。それは「探している時間」であり、「知っている人に聞かなければならない時間」です。

一口に情報共有と言っても、そこにはいくつかの種類があります。現在、弊社ではその種類に合わせて、アナログとデジタルを使い分けた「情報の整理」を進めています。

1. 「カチッとした」基幹データ(受発注・金額)

これについては20年以上前からデータを蓄積してきました。現在は元データをAWS(アマゾンウェブサービス)に置き、バックアップ体制も万全です。

現在はMS Accessを入り口にして運用していますが、PCの更新のたびに設定が必要なのがネック。今後はWebアプリ化を進め、どの端末からでもサクッとアクセスできる環境を目指しています。土台(データ)がしっかりしているからこそ、その「バリエーション」を増やす段階に入りました。

2. 「流動的な」現場の指示(進捗・ToDo)

登録する前の一時的な情報や、日々の「これやって」という指示。これにはGoogle Workspaceを活用しています。

Google Chatでのやり取りやToDoリストが中心ですが、リストだけでは管理しきれない部分は、Gemini(AI)の力を借りて自前でアプリを作成し、運用を始めました。AIのおかげで、自分たちの使い勝手に合わせたツールが安価に、しかも即座に作れる。いい時代になりました。

3. 「定型化できる」製造ノウハウ(金型・設備操作)

金型の寸法や所在地、機械の基本操作。これらは「いかに早く検索できるか」が勝負です。 ポイントは、徹底したテキスト化。検索窓に品番を入れれば、すぐに答えに辿り着けるようにしています。

また、新たな取り組みとして「動画マニュアル」も始めました。新入社員の加入や業務分担の変更が重なる今、言葉で伝えるのが難しい「コツ」を動画に残しています。現場のスタッフは手がふさがっていますから、パソコンではなくタブレット。「見たい時に、サクッと見れる」仕組みを構築中です。

4. 最大の難問、「ゲリラ的」な職人情報

実は、一番大切で、一番管理が難しいのがこの第4のカテゴリーです。 「この色の絶妙な合わせ方」「この製品の角の落とし方」といった、多品種少量生産ならではの細かすぎる仕様情報

大手さんのような「製品仕様書」を全アイテムで作れれば理想的ですが、リピートがあるか分からない、数千種類に及ぶ「ゲリラ的な仕事」にそれを適用するのは現実的ではありません。

現在は「とにかくテキストで残す」ことに集中しています。製品データと同じ階層にメモを残したり、Google Keepへ放り込んだり。DB(データベース)に紐づかない情報であっても、まずは書いて残す。これが鉄則です。

理想は「社内専用のAIブレイン」

私の理想は、これらバラバラに存在するテキスト情報を、NotebookLMのような社内専用AIにすべて学習させることです。

「〇〇社の、あの青っぽい銘板の注意点は?」と質問すれば、AIが過去のメモや動画、やり取りをすべてさらって答えをくれる。あいまいな検索でも、必要な情報にたどり着ける。そんな「工場の脳」を作りたいと考えています。

大手と同じ管理手法を追うのではなく、AIやDXをガンガン使い倒して、独自の「情報共有の強み」を作る。それが実現できたとき、私たちの現場力はもう一段、進化すると確信しています。

50歳になっても、毎日が勉強であり、挑戦です。 まずは「書いて残す!」を泥臭く続けていきます。