止まらない荒波の中を生き抜くために。
止まることのない、外部環境の変化
社長に就任してからというもの、振り返れば常に激動の渦中にいたように思います。 2008年のリーマンショックに始まり、震災、コロナ禍、そして近年のウクライナ情勢やアメリカの関税問題、今の中東情勢……。
次から次へと押し寄せる出来事のたびに、材料不足やコスト高騰への対応を迫られてきました。自分たちの努力だけではどうにもならない外部要因によって、これまでの「当たり前」が通用しなくなっています。
「町工場サプライチェーン」の危機
特に切実なのが、周囲の協力工場の廃業ラッシュです。 長年、日本の製造業を支えてきた熟練の社長さんたちが引退し、後継者がいないために廃業を選択される。そんな光景を何度も目の当たりにしてきました。
売上の減少であれば、徹底した管理や経費削減など、自社の判断でコントロールできる部分もあります。しかし、職人と呼べる零細企業の繋がりで成り立っていた「サプライチェーン」の維持は、一筋縄ではいきません。一見、簡単そうに見える仕事でも、そこには代わりのきかないノウハウが詰まっているからです。
大手メーカーが求める「品質の安定」という価値
こうした状況下で、大手メーカーさんの外注選定の基準も変わってきている印象を受けます。 以前は「コスト」が最優先でしたが、今は何よりも「品質の安定」が重要視されるようになりました。
大手さん内部でも仕事の細分化が進み、一気通貫で品質の良し悪しを判断できる人材が減っている、という背景もあるのかもしれません。だからこそ、現場には「以前と同じもの」を確実に納品し続ける安定感が求められています。今の時代、「供給を止めず、品質を維持し続けること」こそが、最大の信頼に繋がるのです。
私が考える「3つの方向性」
周りの協力工場が消えていく今の状況を打破するため、私は「自社でやる」という道を選びました。替わりの会社を見つけるのではなく、自分たちの中にその機能を取り込み、責任を持ってコントロールできる領域を増やす。そのために、弊社では3つの軸を並行して進めています。
一つ目は、「標準化・数値化・機械化」をどんどん進めること。お金で解決できる設備投資や、数値で制御できる部分は迷わずテクノロジーを導入します。 二つ目は、「管理というソフト面の強化」です。現場の作業者が品質だけに集中できるよう、進捗管理などの業務はシステム化して負担を減らす努力を続けています。
そして三つ目が、どうしても残る「アナログな感覚」を守り、次へ繋ぐことです。例えばアルマイト工程のように、気温や湿度で仕上がりが変わる繊細な領域は、最後は人の「勘」がスムーズな流れを作ります。こうした数値化できない部分をどう残していくかが、モノづくりの本質だと感じています。
「未経験」から育つ、新しい技術の芽
現在、シルク印刷の工程もベテラン職人から新しいスタッフへ引き継いでいます。このスタッフは決して「若手」とは言えない年齢で、この業界も全くの未経験でした。しかし、いざ始めてみると非常に筋が良く、覚えも早い。今では不良が劇的に減りました。
本人のやる気と環境さえあれば、何歳からでも技術は習得できるのだと、私自身も勇気をもらっています。もちろん、インクを混ぜて狙い通りの色を作る「調色(色合わせ)」などは、まだ数値化しきれない職人ならではの深い世界があり、彼も今まさに試行錯誤している最中です。こうした現場のリアルなこだわりについても、また別の機会にお話しできればと思います。
厳しい時代は続きますが、システムで効率化できる部分は積極的に進化させ、一方で人の感覚でしか守れない部分は大切に継承していく。そんな真摯なモノづくりを、これからも続けていきたいと思っています。
