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初期費用は「悪」ではありません。銘板作りで失敗しないためのコストの考え方

最近のモノづくり業界では「初期費用ゼロ」「1枚から即納」といったキャッチコピーをよく目にします。弊社でもダイレクト印刷(UVインクジェットやレーザー加工)を売りにしているので、自分たちの首を絞めるようなタイトルですが……あえて言わせてください。

「初期費用は、必ずしも悪ではありません」

もちろん、急ぎで1枚だけ、あるいはすべて内容が異なる可変データで数枚だけ、という場合はダイレクト印刷が最強です。しかし、条件によっては「版」を作ったほうが圧倒的に安く、しかも高品質に仕上がるケースがあるのです。

今回は、知っているようで知らない「初期費用と品質」の裏側をお話しします。

1. 「版代=高い」という誤解

「版を作る」と聞くと、数万円の余計なコストがかかるイメージを持たれがちです。しかし、実はそう単純ではありません。

例えば、版代が10,000円かかったとしましょう。もしその版を使って、1枚の大きな材料から100個の銘板を面付けして作れるとしたら、1個あたりの版代はわずか100円です。

これを100枚すべてレーザーで彫って、色を入れて、はみ出た塗料を拭き取って……という手作業を繰り返すと、工賃(人件費)だけで版代を軽く超えてしまいます。結果的に、版を作成したほうが安上がりになるケースは多々あります。 ※ちなみに弊社では、分かりやすくするために版代を製品単価に含めてお見積りを出しています。

2. 「最新技術=高品質」とは限らない?

UVインクジェット印刷は、最新のデジタル技術でカッコいいイメージがありますよね。しかし、金属に直接印刷する場合、正直に言えば「インクはただ乗っているだけ」です。

もちろんプライマー(糊の役割をする下地)を塗りますが、金属の表面に焼き付けたり、染み込ませたりする方法に比べれば耐久性は落ちます。 その点、アルマイト印刷は金属の微細な穴に色を封じ込めるので擦っても落ちませんし、エッチングは金属を彫り込んだところに塗料を充填して焼き付けます。この「耐久性の差」は、長く使う銘板においては決定的な違いになります。

3. レーザー加工の「得意・不得意」

最近は「レーザー推し」のお客様も多いのですが、レーザーも万能ではありません。 まず、深く彫ろうとすると金属が焦げたり、彫った面がザラザラになったりして、仕上がりが美しくありません。「色を入れれば隠れるのでは?」と思われるかもしれませんが、塗料の膜はわずか数ミクロン。表面の粗さはそのまま出てしまいます。

また、意外と時間がかかります。弊社には出力の強いファイバーレーザーがありますが、それでもステンレスを深く彫るのは困難ですし、アルミも深掘りには膨大な時間がかかります。「これは時間がかかりすぎる(=コストが跳ね上がる)」と判断した場合は、正直に他の方法をお勧めしています。

4. コストを抑える「キモ」は、ハードではなくソフトにあり

結局、コストを抑えるために一番大切なのは、どの機械(ハード)を使うかよりも、「データをどう取り扱うか(ソフト)」だと私は考えています。

可変データの扱い方や、版を効率よく作るためのデータ作成。実は、ここが一番のノウハウです。 弊社では、支給データであってもそのまま受け取るだけでなく、あらかじめ「ひな型」をお渡しして、最適な形式でデータを作成していただくようお願いすることがあります。

事前のデータ処理という「ソフト面」を徹底することで、無駄な作業時間を削り、結果的にお客様のコストを抑える。つまり、工場だからこそ、作業者が作業しやすいデータの作りが分かりますので、頂いたデータを作業しやすいデータに編集して、全体で効率化できコストを抑える。これこそが、弊社の隠れた強みだと思っています。